みなさまいかがお過ごしでしょうか。
「佐伯祐三 自画像としての風景」を中之島美術館で観てきました。
実は2回目。
東京ステーションギャラリーで観たのです。
好きな作品にもう一度会えるなんて、嬉しい。
同じ美術展でも、違う美術館で観ると、違って観える。1度で2度美味しい、みたいな。
上の記事で、佐伯さんの画の雰囲気と東京ステーションギャラリーの煉瓦との相乗効果に言及しているけれど、実は中之島美術館も負けていない。
というのも、この美術館がこの展覧会をするために造られたと言って過言ではないそうだから。
詳しくは、山田五郎さんの解説をご覧ください。
尤も、この解説で予習は必須。鑑賞の面白さアップすること間違いなしだから。2本立てなので、後編お見逃しなきよう。
個人的にも、中之島美術館の方が広くて好き。スペースが十分にあるから動き回れるのが良い。というのも、じっくり観たい作品は、誰もいない時を狙ってに何回も観に行くから。あと、立ち止まってメモを取っていても、邪魔にならないから。
では、そうやって気兼ねなく取ったメモを見ながら、私の感想いってみましょう。
「柱」と坂の日本
「20 落合風景」
五郎さんから、やたら電柱描いてるって事前情報を得ていた。
日本の風景の中に立つ電柱を見て、ヨーロッパの柱とのリンクを感じた。
ヨーロッパって、街中の広場にやたらポールが立っているじゃないですか。
ヨーロッパというと、主語が大きいけど、私の記憶ではローマには特に多かった。あれ、なんなんだろうと思ったら、オベリスクという記念碑だそうです。
そんなオベリスクを、日本の電柱に投影したのかな?と思ったのだけど、無理があるでしょうか。
「目白自宅附近」などの作品から分かるように、東京もまだ平たい。そんな高い建物がない中で目立つ電柱から、フランスで見た柱を連想した・・・?
「56 風景」
空の青と白の混ざり具合がいい感じ。一方で、左側の木の上が、少し雑な感じで描かれているのが、アイキャッチング。
壁のパリ
日本の風景が空の美しさに目が惹かれる一方で、パリは建物がキャンバスを占めている。石造りの建物に映える灰色の空。
「91 アントレ ド リュー ド シャトー」
建物が重なっているのが良い。建物の向こうに建物が重なっているかんじ。道が規則正しくない証拠。こういう道を散歩するのが、ヨーロッパの街歩きの醍醐味なんだよなあ。そして、大好きなマドリードの街角の写真を思い出す↓(撮影 by 私)
「96 ピコン」
左の文字が踊っているのと同様に、木々の小枝も踊っているよう。
曇天の空色だけど、ポスターの前に傘を持つ人が立っていて、ああやっぱり雨なんだ、とリアルに感じられる一枚。色合いと雨、フランス、この混ざり合いにうっとりする。
「94 カフェ・タバ」
「カフェ・タバ」っていう店の名前なんだ〜って横にいた人が言っていたけど、コーヒーとタバコを売ってますよっていう意味だと思う。
これこそ、東京で見た時に1番好きだった1枚。その時は個人所蔵ってなっていたはずだけど、中之島美術館になっていた。
この絵の黄色い世界が、本当に好き。
展示の最後の方に、もう2枚黄色が目立つ作品、「黄色いレストラン」と「ロシアの少女」。これらも同様に、独特の空気を含んでいる。
「104 ガス灯と広告」
東京国立近代美術館で見て、私の記憶に刻まれた一枚。本来美しいとされていないものを、これほどまで美しく描くことができるのか。
なるほど、無有好醜(五郎さんの解説の受け売り)。
「107 新聞屋」
右側の新聞の立体感と、左側の扉の奥の暗闇の深さ。
「131 村の風景」
モランの風景、最期の作品群の1つ。村の家々の描き方に、以前の作品(セザンヌの影響を受けた少し角張った家々の絵)の面影。他の作品よりも空が広め、特に雲の描写が丁寧で、生き生きとしているように感じられる。
「135 モラン風景」
全体が左に傾く、内面の崩壊、残りわずかな命への焦燥感、チューブ直の煙、トータルで醸し出される迫力、あるいは切迫。「122 工場」も同じ印象を抱いたけど、そちらはさらにデフォルメされた工場に、痛みを感じる。
気が済むまで鑑賞して、所要2時間(笑)
充足感がすごくて、美術館自体の建物にうっとりするのを忘れていた。
尚、平日の昼間ということもあって、来場者の平均年齢はかなり高め。でも、そうであるが故に、展示の最初の方こそ皆さんじっくり観られていて、作品の前に人が多かったけど、後半はお疲れなのか、人が一気に減ったのでゆっくり観られました。ありがたい。
ちなみに、中之島美術館へは、大阪/梅田駅から徒歩で行ける距離だと思う(むしろ健康のために歩こう!)
ドーチカ(堂島の地下街)を最後まで下って、地上に上がって橋を渡り、川沿いを歩くも良し、京阪の駅の地下通路を行くもよし。
6/25までなので、お早めに。
ではまた、ごきげんよう。
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