「ボテロ展 ふくよかな魔法」

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いい肉の日、みなさまいかがお過ごしでしょうか。

肉付きの良い絵を紹介するにピッタリの日ですね。

そうです、「ボテロ展 ふくよかな魔法」を観に、京都市京セラ美術館に行ってきました。
とてもおすすめです。

さて、ボテロさんは丸みを帯びた、というか、膨張してはち切れそうな人や物を描く、コロンビアのアーティスト。

私が初めて彼を知ったのは、留学先の街で。
スペインのオビエドで、知らない人はいないであろうくらい、街を象徴する像が2つあるのだけど、それがボテロ作品なのです。

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通称が中々ユニークで。
左、Gorda = おデブ
右、Culo = お尻

待ち合わせスポットなので、○時にGorda で~とか言っていて、そのシュールな見た目、あるいは響きとは裏腹にすごく生活に馴染んだ像だった。

だから、ボテロさんも身近に感じていて。
このボテロ展、絶対に見に行こうと思っておりました。
結果、大満足の内容。

最初に出迎えてくれる初期の作品には、まだ彼特有のふくよかさは見られず。
不自然なアンバランスさは既にあるんだけど、なんというか、頭でっかちなかんじ。そして、四角い。

ボテロさんが、その丸みを自分の絵の中に発見したのは、マンドリン(ギターみたいな楽器)を描いていた時だそう。
真ん中の穴を、敢えて小さく描いたら、全体が爆発したかような衝撃を得たそうで。
やはり、芸術は爆発なのだろうか。

それにしても、小さく描いたことで、全体が大きく見えるというのは、面白い効果だよね。

面白さ、つまりユーモアは、作品の中にも度々感じられる。
例えば、大きな梨からは、虫がひょっこり顔を出している(かわいい)。

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あと、果物の静物画の感想が2点ほど。
1つは、「パイナップル」の周りのハエ。
ダリのアリの影響を受けているのだろうか?
もう1つは、カットされた「オレンジ」。
半分のと、1/4カットが2つ。従って、それらで1つのオレンジを成していると思われるのだが、半分のと1/4の、熟れ具合が違いすぎて、まるで同じオレンジには見えない。

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それでは、人物の描写に移りましょう。
「コロンビアの聖母」、ボテロさんの手にかかれば、マリアはぽってり、イエスは普通の少年(Tシャツ短パンの現代風少年)。
マリアさんの目には、というか顔中を涙がつたう。そして、少年、ではなくイエスの手にはコロンビアの国旗。絵の全体の色彩もコロンビアの国旗を思わせる。
30年の、1992年に描かれたこの作品。涙にどんな意味を込めたんだろう。

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「守護天使」は、そのタイトル通り天使がメインなのだけど、その扱われ方がとても軽々しく感じる。ボディはとても重々しいのに。

涙は、「寡婦」という作品にも見られる。
よく見ないと分からない、というか説明文にその記載があるおかげで気付いた。
もう一つ、この説明文が与えてくれた気付きが、表情について。
そう、ボテロの人物には表情がない。
それは、ボテロが賞賛する、ルネサンスの画家ピエロ・デ・ラ・フランチェスカの肖像画やエジプト芸術の無表情さらしい。(寡婦 1997年の説明文を参照)

無表情であるがゆえに、涙などのディーテルがより深みを持ってくるのだろう。

ユニークなのは、「バーレッスン中のバレリーナ」
バレリーナもぽっちゃり体型なのね、と思って説明文に目を通すと、中々面白い気付きがあったので、引用。
「実際、これほど恰幅の良い体型の踊り子がつま先で直立し、もう一方の脚はかくも大きく上げられると想像するのは難しい。皮肉を含むこのようなぎこちなさはボテロ芸術の中核である。(中略) 常に好意的な眼差しで現実を見るように私たちを誘うのである。」
なるほど。そういうメッセージも込められていると知って見ると、また違って見えるから面白い。

展示を見進めていくと、タッチが急に柔らかくなったのは、水彩画。
同じような絵でも、資材が変われば表情が全く異なる。
油絵のマットなかんじが、ボテロらしさの一つである気がするから、水彩画はどことなく寂しさを感じる。
でも、面白いのは、書き直しがそのまま残っていること。特に足元。
自然体な芸術作品。

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“Art is the possibility of saying the same thing in a different way.” Botero

と言うボテロさんは、名著の模倣作品をいくつも制作している。
「ベラスケスにならって」では、”Las meninas” を取り上げているのだけど、絵全体でも、マルガリータ王女でもなく、そのタイトルに則って侍女だけにフォーカスした作品になっている点が、まさにベラスケスにならっているなあ、と。

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そうそう、ボテロさんが世界的に注目されるようになったキッカケも模倣作品。
それが「12歳のモナリザ」MoMAが購入したそう。
この展覧会には、2020年に描いたモナリザがあったけれど、ボテロさんの無表情さがモナリザの空気とマッチしていて、どの模倣よりもしっくりくる気がした。(冒頭の写真の右側の絵)

会期の初め頃にこの記事を書けばよかったのだけど、私が留学先で出会ったように、みなさんもボテロさん作品にはきっとどこかで出会えると思うので、その時には是非、注視してみてください。

そんなところで、今日はこの辺で。
ごきげんよう。

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この記事を書いた人

アラサー女子\(^^)/ マイペース&自由に生きてます。物欲ゼロ、代わりに旅欲高め。渡航32ヶ国、まだまだこれから!英語&スペイン語を話せます。Instagramで韓国グルメ発信中☞ @arisa_travelife

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